経年劣化という言葉があります。
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時間とともに品質が低下すること
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雨風・湿気・温度変化・日照などによる品質の低下だけでなく、通常の方法で使い続けることによる摩滅、汚れ等の損耗も経年劣化である、とされています。
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この世の中に存在する限り「経年」からは逃れられません。
それは誰でもわかっているはずなのに、こと建築ではこの言葉がひどく嫌われている気がします。
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人は同時に、古いものを良しとする感性を持っています。
法隆寺は誰だって好きだし、お寺や城を見て回るでしょう。
そこには「経年劣化」ではなく、「経年変化」という
お金では決して買うことのできない付加価値があるからだと思うのです。
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長い時間を経て、少しづつ少しづつ
色を変え、味わいのある雰囲気や佇まいになる
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歳を重ねるという言葉あるように、積み重ねた歳月がものに深みや味わいを持たせるのです。
それは古くからある詫びさびといった日本古来の間隔に近しいものでもあると思っています。
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この経年変化による味わいを空間に持たせるために
僕は可能な限り本物の材料を使うようにしています。
そうすることで、人も材料も、住み・使い続けていくうちに、空間になじみ
唯一無二の空間に変化していくのです。使い込む楽しさがあり、少しづつ変化していく様子は人間の様で愛着もわくと思います。
そうして自分が設計した家は、クライアントの家になっていくのです。
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そうやって住まい手とともに素敵に歳を重ねていってほしい。
それを経年変化と呼んで、そんな時間の経過までもデザインしたいと思うのです。